狼の牙は巡って621の翼となったか【AC6/SEKIRO感想】


ARMORED CORE 6とSEKIROは非常によく似ている。
シナリオの作り、シリーズ中の立ち位置、アクション面と、枚挙にいとまがない。
それぞれの感想、そこから垣間見得たものを忘れないうちに記しておく。
そこから魅力を伝えられたらと思うので、ネタバレはしないように配慮する。

前提:フロムゲーのシナリオの特徴

まずこれはSEKIRO、AC6に限らず言えることが、
フロムの作る作品は非常に、バイオハザードシリーズのようなタイプのシナリオだ。
物語の核となるのは作中では多く語られず、
ここに至るまでの状況の背景やキャラクターの過去が、プレイヤーが探索している中で明らかになる。
そこからほんのわずかに見える物語の核に照らし合わせて、プレイヤー一人一人に大筋は似ていても違う解釈をさせるシナリオなのだ。
シナリオとしては短めである。だが周回ゲームということを考慮すれば、短すぎず長すぎないシナリオとなる。ここもバイオハザードシリーズと似ている。
またこれはフロムゲーの特徴であるが、全てのルートを追うためには周回しなければならなく、ただ同じような周回をするのかといえば、作品にはよるが、進行の仕方が異なったり、新たなイベントを挟むなど、シナリオが気に入れば必然的に周回がしたくなる仕掛けとなっている。ここはNireシリーズのシナリオに近い。
周回したくなる仕掛けと、探索を行えばほど明らかになる設定に、
どれだけ難易度があがろうともそれを省みることなく、プレイヤーの闘志を燃やさせる、飴と鞭が非常によくできているシナリオと言える。

SEKIROとARMORED CORE 6がよく似ているのはなぜなのか。

はじめに結論から言うと、この両者は全く別のゲームだ。
同じテンプレートの使い回し、と言いたいわけではなく、
この両者はとても面白いし、なぜこの両者に惹かれたのかをあえて考えたいのだ。

この両者は一見すると全く、制作会社以外には関係がないように思える。
方やSFロボットアクションゲーム、方や戦国ソウルライクアクションゲームだ。
ただ、この両者が特に共通している点としては、シリーズの中では異端、あるいは異端ではないもののかなり特異的であるという点だ。
ARMORED CORE 6に関しては、正当ナンバリングであるため、異端という表現は適切ではない。
また4作前であるARMORED CORE 4、ARMORED CORE for Answerからシナリオ面、アクション面を多く継承しているので、特異的であっても、ARMORED COREの今までの体験を崩すような作品ではなく、むしろ過去作を親しんだ人だけではなく新規にもとっかかりやすいのが好印象だ。
シナリオ面では、マルチエンディングが採用されたのもACfAで、
直接的な時系列の関係はないものの、
AC6もまた次世代の燃料技術をめぐった利権争いというAC4、ACfAと共通した状況にある。
アクション面ではこの頃に登場したパルスアーマーと呼ばれるバリア、アサルトブーストと呼ばれる短時間の加速、クイックブーストと呼ばれる瞬間超加速、肩武器が使えるなど、操作方法に違いはあっても、飲み込むのに時間を要するほどの大きな違いはない。
やはりAC6はナンバリングにふさわしい正当なARMORED COREだ。

SEKIROの方はといえばソウルライクという要素はほどほどに残しながら、
シナリオ面でもアクション面でもやはり異端だろう。
ELDEN RINGから死にゲーにハマった人も、
当時から発売順にDARK SOULS II、Bloodborneとやった人も、間違いなく同じ印象を受けるだろう。
Bloodborneも異色とされるが、個人的にはBloodborneよりもSEKIROはさらにソウル要素は薄い。
ゲームを盛り上げる上でソウル要素を残しつつ、全く別の作品に仕上がっている。
舞台が西洋や中世ではなく、日本の戦国とぱっと見でわかる大きな違いだ。
武器は基本的に刀一振りで、攻撃と防御を繰り出すというのも新しい。
従来のソウルシリーズは盾を構えることによって防御し、時に敵の攻撃を盾で薙ぎ払うパリィを行なってカウンター攻撃を入れるという戦い方であるが、
SEKIROでは刀で防御を行うし、パリィも刀で行う。大きな点はパリィがソウルシリーズで言えば、盾で薙ぎ払うための動作モーションが若干長いのに対し、
SEKIROはジャストガードのように、攻撃が来そうなその瞬間にボタン入力すれば良い。
これが従来のソウルシリーズよりもバトルのテンポを一層ハイスピードに演出できる一因でもあるのだ。
SEKIROもAC6も、従来シリーズの良さを継承しつつ、新たな要素がふんだんに詰め込まれている。

AC6とSEKIROのシナリオの特徴

シナリオについては前述した通りだ。その前提にもれなく、周回をしやすいシナリオで、かつ構造も同様。どちらもちゃんとフロムなゲームだ。
新しいゲームになるにつれてフロムゲーはより良いシナリオになっている。
ARMORED CORE 6の前作はELDEN RING、その前作がSEKIROになり、発売時期としては4年も空いているから、比べることでもないが、
新しいから当たり前、と言うことではなく
それを踏まえてもARMORED CORE 6のシナリオはよくできている。
逆にSEKIROのシナリオで唯一少しばかり不満に感じたのは、
ルートによっては1周するだけで良いか、となりそうなルートが2つあることだ。
さらに言えば、もちろん新たなNPCイベントは発生して新鮮な部分もあるが
同時に4ルートのう3ルートが同時にフラグを立てられるので、
まめに探索しているプレイヤーほど、周回後に得られる新たな要素は薄い。
フロムゲーの良いところは、物語の中核をブラックボックスにし、周回することで新たなものを見れること。
悪く言えばそれが見つけられなければ周回するメリットは、少なくともシナリオ面にはなくなってしまう。
残りの1ルートのように、そもそも闘うボス敵が違ったり、NPCイベントが同時に進行できないようであれば、
物語の終わり方はそれぞれ思うところがあっても、これらの不満は薄かったのではないかと思う。
ここまでSEKIROのシナリオの不満を述べてきたが、
個人的にはどのルートも非常に好きなので、あくまで好きだと言う感情抜きに不満を述べた場合だ。それぞれテーマがあり、訴えかけて来るものも違うので、私はだからと言ってSEKIROのシナリオが嫌いなわけではないのだ。

ARMORED CORE 6の場合、「選択」に非常に重きが置かれている。
シナリオ内でも、主人公が仕えるハンドラーウォルター、脳内に語りかけてくるエアには主人公の選択を尊重したいと言われるし、
戦友と慕うラスティも「意思なき強さは危うい」と言われる。
プレイヤーはミッション選択という形で、選んだミッションがそのままルートとして選択される。
ルート分岐の方法としては非常に単純でプレイヤーにとっても簡単なものだ。
マルチエンドのゲームは、Trueエンドに入るためには、必ず何かの対価が必要である。
SEKIROの場合はその対価は攻略情報を見なければ見落としてしまいそうな、アイテムの回収とイベントの進行であった。
ARMORED CORE 6はルート分岐が簡単で単純と述べたが、それがないわけではない。
ARMORED CORE 6での対価は周回そのものだ。
周回そのものが対価という意味で、冒頭で述べたNire、特にNire;Automataと非常によく似ている部分だ。
2周目まではTrueエンドに至ることができない。
周回が対価になっているからこそ、
その対価の価値を下げないための措置として必要なものである。
だからこそ対価を支払った分だけのTrueエンドに期待を寄せるしそれに報いるシナリオが見たい。
フロムゲー、いやひいてはシナリオのあるゲームがあるべき姿だと思っている。
それこそが究極的な飴と鞭なのだから。
飴しかないなら、実況動画を見ればいい。いいシナリオの映画を見ればいい。
鞭しかないなら、やる必要がそもそもないのだ。
そのバランスが取れてこそ良質なゲームだと思うし、バランスが取れている際の相乗効果といえば達成感や満足感は計り知れない。

どちらも等しくTrueルートを拾うために対価を支払う形になっているし、
フロムゲーにもれなく、他社にはできない飴と鞭の使い方をしている。
飴を有効的なものにするために、語りすぎないシナリオだという点も共通しているのだ。

アクション面もSEKIROに似ている。というかAC6はその精神を受け継いだのだ。

ここまではシナリオについて述べてきた。
アクション面についてはどちらも従来とは毛色の違うアクションになる。
ここで共通する一番のものといえばやはり
SEKIROならば体幹ゲージ、ARMORED CORE 6ではACS負荷ゲージだ。
名前こそ違うがどちらも攻撃を続けることで蓄積させ、
蓄積し切ると相手が体制を崩し、プレイヤーの有利に働くものである。
AC6では、ACS負荷ゲージが溜まり切るとスタッガー状態となり、硬直してどんな攻撃も全て大ダメージになってしまう。
SEKIROでは体幹ゲージが溜まり切ると、HP量に関係なく即座に倒し切ることができる。
どちらも利用するのがプレイヤーだけではなく敵も利用し、プレイヤーを倒す戦術に組み込む敵がいるのも共通している点だ。
どちらの作品も、同系シリーズ作品ではなかった新しい要素だ。
AC6では一部ではこのゲージに抵抗がある人もいるようだが
私はこのゲージがあるからこそ緊張感のあるバトルになっていると思っている。
HPの残量がどれだけあろうと、このゲージが溜まり切れば致命傷は免れない。
雑魚戦では退屈なものから気を抜けないものになるし、
ボス戦ではこちらも油断できないが、ボスを一気に倒すチャンスともなり得る。
逆にいえばこちらがHPがありゲージが溜まっていないなら、一撃をもらう覚悟で相手のゲージを削り切る判断もできる。
ヒットアンドアウェイも敵のゲージが回復してしまうから安易にはできない。
この両作品を語る上で欠かせない重大なアクション面における駆け引き要素だ。
それによって今までは長期戦を仕掛ける敵も多かったが、
ボス敵も慣れれば瞬殺できるが、自分も油断をすると一瞬で死ぬようなある意味で条件が対等という、これもまた同系シリーズではあり得なかった部分だ。
ソウルシリーズではどうしても、プレイヤー側が不利だからこそヒットアンドアウェイになりがちだし、
ACシリーズだとアセンブル(ACの機体のパーツ構成)を変えられる分、こちらの攻撃手数や戦術の幅の方が多いので、一旦は負けても1対1だとこちらの方が有利である場合も少なくはなかった。
あのゲームはどちらかというと機体を思った通りに動かせるまでが難しいゲームだ。
だがその体幹(ACS負荷)ゲージがあることによって、長期戦はどんな状況であろうとこちらが不利、短期戦ならば多少の違いはあっても自分と敵が同条件なのだ。こう考えると、どちらの作品も難易度は確かに高いのだが、
プレイヤーにとってはこれ以上にない条件下で戦えることになる。非常にフェアなのだ。
これほど画期的なバランス調整があるのか?
ネタでAC6をアーマードソウルというのはいいが本気でそう思っているならあまりにセンスがない。フロムの何を見てきたのか。
まぁ私も新参者なんですがね。

総評

ARMORED CORE 6は新規で入る人をかなり想定された作品らしい。
シナリオ面でも確かに、近年のフロムらしい仕上がりだ。
アクション面も、従来のACシリーズから大幅に操作性が改善され、直感的に操作できるまで至った。
別ジャンルのゲームではあるが、人気オンラインロボット格闘ゲームである、機動戦士ガンダムエクストリームバーサスに操作性、UI、カメラ使いが近く、
親しまれるロボットアクションゲームとは何かを改めて見つめ直して改善された、作品だと感じる。
「AC屋さんであるフロムがソウルシリーズを作り続けるのはACのため」
と言われるのが納得の出来だった。
ソウルシリーズで培ったノウハウもまたふんだんにAC6に取り入れられた。

SEKIROの方も確かにAC6にしっかりと引き継いだシステムと爽快感が光るゲームだった。
シナリオに引き込まれ、続きが期になるが故に類稀なる強者に挑んでは死んでやっと突破した達成感を忘れられない。
これには既視感があった。AC6だ。すでにSEKIROやソウルシリーズをやっている方にはお馴染みではないだろうか。
公式スピンオフ漫画、「SEKIRO外伝 死なず半兵衛半兵衛」も非常に良かった。


ソウルシリーズやSEKIRO、やったことがあってARMORED CORE 6興味ある方はAC6、
あるいはAC6を終えてしまってACロスになってる方はSEKIROもおすすめしたい。
今更か。


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